薩南&トカラDiscovery Cruiseは枕崎港を母港に、5日間で薩南の島々、そしてトカラ列島の島々を巡り、潜りつついろんな島に泊まり温泉に入り、美味しい料理食べ、絶景を眺め、航海中の自由な時間を楽しむ、、、
そんなロマンあふれる冒険の旅です。

なんて話をすると「そりゃ面白そうだ!」「ぜひ参加してみたい!」なんて声が聞こえてきそうですが、、、
実際は
天候は急変する。
潮はやたら速い。
とにかく遠い。
一番近い硫黄島で枕崎港から50km、トカラ列島最北端の口之島で150km、今回の目的地悪石島はなんと枕崎港から210kmも離れています。
宿の手配、タンクの手配、ルートやポイントのチョイスも自分たちで。
マニュアルもガイドブックも何もありません。
そしてはるばる行ったとして、そこに100%満足できるようなポイントがある保証もありません。
思い通りにならないことだらけの航海。
据え膳の完成を待って美味しいとこだけ持って行こう、ってのがコスパ優先な考えなんだとしたら、
こんなコスパの悪い話もない(笑)
けれど、例えば定期航路、フェリーを利用してこれをやろうと思うと、とんでもない日数がかかってしまいます。
今回のように口之島、中之島、悪石島に泊まりつつ潜ろうと思うと金曜日の夜のフェリーに乗ったとして悪石島にたどり着くのは翌週の土曜日です。
硫黄島も行こうってなると一度鹿児島まで戻って別のフェリーに乗る事になります。
フェリーで行く方が安いし確実性も高いかもしれません。
しかしクルーズには広いエリアを、時間にも他人にも縛られず、自分たちの裁量で潜り倒す、と言う自由があります。
なので僕は小舟で行く道を選びました。
そもそも自由はコスパ悪いんです。
今回参加してくれたメンバーの方がぼそっとつぶやいていました。
「トカラや南薩摩の海は何も出なくてもそれはそれでいいんですよ。あの手つかずの人が入ってない海特有の野生の海の感じがたまらんのです。」
ありがとうございます!
まさに僕もそう思ってます。
と言うことで、今回も枕崎港で栄真丸にタンク90本、おやつにドリンクに、大量のお酒(笑)、そして夢と希望を積み込んでいざ出航です。
〜まだこのクルーズに乗ったことがない方、我々の航海はいつもこんな感じです。
なんていうと嘘になります。
これはかなり、限りなく100%に近いくらい思い通りに行ったパターンです。〜小さく注意書き(笑)
初日群青日和 〜枕崎から口之島へ〜
べた凪の海。
群青色の空。

最高の出船日和。
今回のメンバーはサワディダイブ御一行様。
チャータークルーズのガイドを担当させてもらいました。
那覇にショップを構えつつ、世界制覇と銘打って、世界中の(本当にどこでも行くよね(笑))ダイビングポイントへのツアーを開催している、世界の海を知るメンバーたち。

今年に入ってもう4本目の世界制覇企画なんだとか、、、
すごいな。
正直、緊張する。
さて、トカラ、頼むぜ。
その実力を見せてくれよ、なんて祈りながら最初のポイント、口永良部島野崎を目指す。
このポイントはスマッシュヒットが多い印象で頼りになる。
根待ち場所もあり、乱流に乗ってのドリフトもありでトカラ海域に入る前の体慣らしにもちょうど良い。
エントリーするとまずイソマグロの群れ。
6、70はいたと思う。
「うわ〜!」って声が聞こえる。
よし、掴みはオッケーだ。
その後、ハンマーやメジロザメ、そしてアカウミガメに接近遭遇。



(写真 TAKEちゃんに頂きました。ありがとうございます。)
浮上した時のみんなの笑顔に緊張がほぐれます。
こうして勢いよく始まったこのクルーズ。
トカラ海峡に突入し、黒潮ど真ん中の広大な沈み瀬、芽瀬を目指します。
が、いつもならぐんぐん上昇するはずの水温が上がらない、というかむしろ下がっちゃう、、、

(船の水温計)
黒潮独特の濃い群青色に染まるはずの海も何だか緑っぽい。
あれ?
迷いつつエントリーするも水中は透視度5〜10mと激濁り。
こんなことある?
いや、あるんです。
それがトカラ。
すぐに浮上して場所替え。
口之島の平瀬でエントリー。
しかし
激流
濁り
低水温
の三重苦は続き、見せ場もなく終了、、、
掴んだ!と思ったらすぐに滑る(笑)
当たり外れ乱高下、これぞトカラ(笑)
ある意味実にトカラらしい初日でした。
初日は口之島宿泊。

民宿中村さんにお世話になりました。
港前の快適な宿。
ありがとうございました。
二日目ハンマートレイン 〜臥蛇島、小臥蛇島を経由して中之島へ〜
いつもなら航海の最終目的地として主役的扱いの臥蛇島木場立神岩。

しかし今回は悪石島がメイン。
「ちょと扱いが軽いんじやないの?」
そんな臥蛇島の気持ちを代弁するかのように1本目の木場立神は、、、
まさかのノートピックス、、、
2本目は気を取り直して小臥蛇島のウェストコーナーへ。
ここは流れを見極めるのがとても難しい。
まずは真ん中のコーナーから南へ。
途中3匹のハンマーに接近遭遇。
いる。
ハンマーはいる。
しかしこれではあたりと言えない。
慎重に流れを見極めての3本目もウェストコーナーへ。
ドロップオフの際を流す。
流れに向かって泳ぐハンマーと正面から遭遇しようという作戦。
すると、、、
エントリーした目の前に大型のメジロザメ。

(写真はAYAさん動画より。ありがとうございます。)
そしてでた!
ハンマー。

(写真はAYAさん動画より。ありがとうございます。)
島側にも沖側にも狙い通りの正面遭遇。
二列になって進むハンマーの列の中央に当たった感じ。
トータル20匹くらい出ただろうか?
右に左に慌しく動くダイバー。
今にして思えば、流れ強くても着底して待ってたら通り過ぎるハンマーを堪能できた気もするが、今まで経験したことのないシチュエーションに高まってしまった、、、
けど「こんな太いハンマー初めてみた〜!」というみなさんの声にホッと胸をなでおろす。
3本かけて1本のあたり。
ま、よしと、して、いいかな?

(いいとも〜)
水温も24度台後半まで上昇。

透明度も回復です。
今日から3日間、宿泊は中之島の海游倶楽部さん。
シェフ自慢の夕食と快適なコテージ。
いつもお世話になります。

三日目波濤を超えて 〜初見参!悪石島へ〜
悪石島。
なんてネーミングだ。
しかし、トカラ列島といえば何となく悪石島が一番有名?かなと思う。
先輩ダイバーの皆様も口を揃えて「やっぱ悪石でしょ」っていうし、
釣り師の船長も「悪石が一番魚影濃いのでは」っていう。
今回はリサーチも兼ねて中之島から1時間半かけて悪石島へ日帰りトリップ。
まだまだ皆様に報告できるほどの成果はあげてませんが
とにかく激流!なのと魚が多い!のはようわかりました(笑)

(ハヨームネ沖。何じゃこの激流、、、)

(魚影はすごい!)
2本目のエンド、粘りに粘って1.5kmほどドリフトしたラスト5分、ダイバーにまとわりつくように次から次へと現れるローニンアジの群れとマダラトビエイの大円団がこの日のトピックスかな。

(写真 TAKEちゃんに頂きました。ありがとうございます。)



(写真はAYAさん動画より。ありがとうございます。)
そう、忘れてはいけない。
噂の「悪」Tシャツもゲットできました♫


悪石島は今後の展開を考えてもとても重要な島なのでこれからじっくり、様子を探っていきます。
GW、六月といけたらいいな〜
Tシャツをわざわざ届けてくれた島のお兄さん、どうもありがとうございました。
四日目 贅沢な悩み 〜再び小臥蛇島へ〜
さて、当初後半時化そうだ、という予報を元に前半行けるとこまで行こう、という感じで一気に悪石島まで到達したこのクルーズ。
しかし嬉しい誤算というか、結局最終日まで凪続き、という予報に変わり「さて、どこでも行けますが、どこ行きますかね?」という贅沢な悩みを抱えることに。
昨年三月に大当たりを連発してくれた諏訪之瀬島を目指すか、今クルーズ一番のハンマートレインをもう一度狙うか?
迷った末に小臥蛇島を目指すことに。

一本目はゆるい流れの時しか入れない雄神瀬へ。
流れが強い時は手に負えないレベルのダウンカレントが発生してとても潜れない幻のポイント。
しかし潜ることができるとイソマグロ(大型小型合わせて100匹くらい)の群れ、ダイバーを取り巻くツムブリ、ギンガメアジにローニン味、そして単体だけどハンマーとメジロザメと最初から最後まで実にトカラらしい魚群ショータイムを、じっと岩に捕まってるだけで味わえる。
「いいポイントだね〜」
みなさん喜んでもらえて今日は幸先良い出足。
しかし、2本目はウェストコーナー南側へ気持ちよく快速ドリフトを楽しむも大物はローニンくらい。
3本目もウェストコーナー。
北側へ流そうとエントリーするも途中で潮が止まってしまう。
魚影は濃かったけれど、、、トピックスはなかったかな〜
どうにも、トカラの海は難しいです。
中之島に戻り源泉掛け流しの温泉を堪能した後トカラ馬に餌やりタイム(笑)

島の観光、これもクルーズの魅力、ですね。
いよいよ明日は最終日だ。
五日目女神は微笑む、ただし一度だけ 〜中之島から枕崎へ帰港 〜
中之島の摩天楼。
沖に向かって続く高層ビル群のような地形が命名の由来。
その沖側先端部分にちょっとした岩があって、僕はこれを自由の女神と呼んでる。
だって摩天楼といえばニューヨーク、ニューヨークといえば自由の女神だ。
今年の三月、認定100匹のハンマーの群れに遭遇して以来エース級のポイントに一気にそう格下感があるこのポイントで今回のシメ、サワディチームのリクエストでもあるタイガーとハンマー両方狙って最後の勝負!
ハンマーはドロップオフの沖側にいることが多い。
ので女神の沖の中層をウロウロしながらハンマーを探す。
しかしタイガーは岩場沿いに深いところからニョロニョロ現れることが多い。
前門の金槌
後門の虎
金槌を追えば虎に気づかない
虎を待てば金槌を見逃すかもしれない
しょうがないからブリーフィングはこうだ
「もしタイガー出るとしたら後ろからなんで、前を見つつも、時々、後ろ見てね」
情けない(笑)
なんてあやふやなブリーフィングなんだ、、、
そして先ずはハンマー登場。
全部で5個体。
なかなかのサイズだしなかなかの接近戦。

(写真はAYAさん動画より。ありがとうございます。)
僕はもう虎のことは忘れていた(笑)
もっと、群れを、先月みたいに100匹くらいの群れを、、、
気持ちはどんどん沖側へ。
ふと振り返ると、みんな女神の周辺に集まっている。
「あれ、誰もついてきてない、、、」
と思いつつみんなのところへ戻って浮上。
「いや〜ハンマー出ましたね、、、、」
っていいかけたら
「タイガーでたね〜\(^o^)/」ってみんなが!!!

(写真はWAKANAちゃん、動画より。ありがとうございます。)
ほんとだ!
シマシマまではっきり。
見てないの、俺だけ???
自分で言ったブリーフィングを忘れて沖にばっか目をやっていた僕だけ見逃しました、とさ、、、
いやしかし、流石世界の海を知る男、サワディダイブのあきさんはちゃんと後ろを張ってたんですね〜
参りました。
いや、ほんとすごいわ。
ところであのすげ〜動画、いつ公開すんのかな?(笑)
さて、2本目はこの間見つけたニューポイントへ向かうつもりでしたが、この盛り上がり、そして自分だけタイガー見てない、ハンマーの群れも実績の少ないニューポイントより摩天楼の方が当たる可能性は高いかもしれない、、、
などちょっと当たると途端に顔を出す欲と妄想で大トリポイントも摩天楼をチョイス。
まあ、ここまで読んでくれた皆様はもう想像しているとおりです。
ハンマーもタイガーも当然いません。
流れも強く根待ちを強いられ、中途半端な飛び出しでそのまま流されてエンド。
なんとも締まりの悪い締めの一本。
ほんと、この辺の引き際というか切り替えが何年立っても下手くそだな、俺(笑)
つい、ね、2匹目のドジョウ狙っちゃうんですよね〜
反省。
肝に銘じておこう。
「女神は一度しか微笑まない」
帰りは硫黄島へ寄って、東温泉を満喫。

ワンダーな冒険の締めにふさわしい異空間で温泉を満喫。
オールオアナッシングな出入りの激しいダイビングでしたが、日本の海もやっぱすごいね〜という皆様の感想にホッとしつつ、これにて、今回の旅は終わりを迎えました。
サワディダイブの皆様、あきちゃん、ともちゃん、お疲れ様でした\(^o^)/

ありがとうございました♫

5日間の航行距離は600km!
燃料タンクパンパンに詰め込んだ3000リットルの燃料をほぼ使い果たして枕崎に帰港。
最終日まで毎日べた凪という奇跡のコンディションに恵まれた5日間はこうして終了しました。
<今回のログマップ>
さて、3月のトカラクルーズ総評で
「トカラはこの海域だけで様々な大物に出会える可能性もあるし、何にも会えない可能性も大いにある」
というようなことを書きました。
結果、今回もイソマグロ艦隊、アカウミガメ、メジロザメ、シルキー、ハンマー、ローニン、マダラトビエイ、そしてタイガーシャークなど、これでもか!ってくらいの大物ラッシュでした。
初の4月クルーズでしたが、やはり春のトカラのポテンシャルを感じます。
特に初日の口永良部島野崎のマグロ艦隊からのサメ三昧とアカウミガメ、二日目小臥蛇島ウェストコーナーの次から次に現れるハンマートレイン、3日目悪石島のダイバーにまとわりついてくるローニンたち、4日目雄神瀬の回遊魚ショー、そして最終日は中之島摩天楼のハンマーからのタイガー登場!は出色のダイビングでした。
次はGWです。
再び悪石島まで遠征予定。
さて、次はどんな海に出会えるでしょうか?
楽しみです。
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薩南、トカラDiscovery Cruise ガイド 木村尚之
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